少し注意して世の中に溢れるロゴマークを観察すると、海に関するロゴマークを使用している企業が多いことがわかります。

海には豊かで優しく、なおかつ力強いイメージもあるため企業やブランドのロゴマークとして使いやすい一面があるためでしょう。しかし商標登録されていないロゴマークは、他企業に利用されても苦情をいうことができません。

ネクタイをモチーフにしたロゴマークの使い方

バラエティー豊富な海のロゴマーク

海と聞いて何をイメージするかという調査によると、「砂浜、ビーチ、夏」といった自然そのものから「水着、ゴム草履、浮輪」といった海にまつわるもの、「釣り、サザンオールスターズの音楽」などの趣味に関するものまで幅広く回答されています。

中には新婚旅行の思い出が浮かんだり、海洋深層水といった日用品にまで連想が及ぶ人もいました。少数派ですが映画「ジョーズ」のサメの恐ろしいイメージや、「ときに冷酷で無慈悲」といった海の印象を語る人もいます。

このように海からは多様なものが想起されるので、おおらかさや優しさ、力強さや雄大さといった海のイメージそのものをロゴマークのデザインとして使うこともできるし、魚やイルカ、海鳥、ヤシの木といった海の生き物や植物をデザインすることも可能です。

涼しげなパラソルや浮輪のロゴマークなら、海で使う用品を売る店や海辺のカフェにぴったりです。実際に干物をデザインしたロゴマークを使っているお店もあります。

ブランディングとしてのロゴマーク

ロゴマークは、消費者に企業やブランドを認識してもらうのに最適です。ロゴマークを見て消費者は「このマークはあの会社の商品だ」とか「同じマークだから同じ企業の商品だ」などと、商品と企業や商品同士を結びつけます。

海には様々な側面がありロゴマークとして使いやすい素材ですが、それだけに実際にロゴマークに海を使用している企業も多数あり差別化が難しくなります。ロゴという言葉は古代のメソポタミアで使われていた円筒印章が起源だといわれており、所有者を表すためのものでした。

ブランドも似たような意味です。家畜に焼き印を押して識別していたので、焼き印を押すという意味のブランドが現在のブランドの由来になっているといわれています。時代が進むとロゴマークが硬貨や紋章に使われ、アイデンティティーを示すものとなりました。

ロゴマークはアイデンティティー以外にも「品質保証」や「意味を伝える」役割りを持っています。大手企業や有名企業のマークがついていると安心感を覚えるのは、一定の品質が保証されていると考えるからです。コンビニのドアに郵便のマークがついていれば、ポストがあるとか切手を扱っているといった意味が伝わります。

国際的に使われているマークなら、言葉がわからなくても意味がわかります。

ロゴマーク作成の注意点

たしかに、海に関するものを扱う企業なら海のロゴマークはわかりやすいかもしれません。しかしブランディングとして必要とされるのはそれだけではなく、企業理念もロゴマークを作成する上で考えるべき重要なポイントです。

企業の使命や志といったものを言語化したものですが、それをすべて込めるのではなくそのロゴマークでなにを伝えたいのかを明確にすることが大切です。見た人が興味を持って意味を調べたとき、よりそのブランドが好きになるようなロゴマークができれば、その企業で働く人も誇りを持てるようになります。

ロゴマークの作成に当たっては、似たようなデザインがないかを確認することも必要です。確認にはネットの画像検索が役立ちます。

SDGs(エス・ディー・ジーズ)のロゴマークにもある海のアイコン

有名企業が容器をプラスチックから紙に替えたり、プラスチック製のストロ-の配布をやめるといった取り組みを始めたことによってSDGsという考え方が広まっています。SDGsの正式名称は「SustainableDevelopmentGoals」で、持続可能な開発目標という意味です。

2015年の国連サミットで採択され、193の国連加盟国が2016年~2030年までに達成するための17の目標を掲げています。

このうち海がデザインされているのは17の目標の1つである「海の豊かさを守ろう」のアイコンで、具体的なモチーフは波と魚です。「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」という目標を示しています。

海にかかわる企業でこの目標が会社の理念と一致するとしても、ブランドイメージの向上のために「海の豊かさを守ろう」のアイコンを勝手に利用ことはできません。許可なく使用できるのは純粋にSDGsを知ってもらうための情報目的に限られ、資金調達や商業用途の場合には国際連合広報センターの許可が必要です。

企業のロゴとSDGsのロゴを並べて使うときは「(企業名/私たち)は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。」という言葉を添える必要があります。背景色は白かライトグレーしか認められていません。その他にもSDGsのロゴマークの使用には、細かいルールが決められ保護されています。

それでも海のロゴマークを作りたいときは

相手に悪意がなかったとしても、自社と同じ商品に似通ったロゴマークをつけられてしまうことがあります。たとえばブルーのミントの香りの石鹸に、海をイメージさせる貝殻のロゴマークをつけて売り出したとします。あとからブルーの透き通った石鹸の中に魚や貝のモチーフが入った商品が他社から発売され、海藻と貝殻のロゴマークがついていたとします。

ロゴマークの色や線の太さも似ていて、チラッと見ただけでは間違えてしまいそうなデザインです。このような事態を防ぐために設けられているのが、商標登録の制度です。商標登録は国に商品やサービスの目印となるロゴマークなどの商標を登録することで、商標を守ってもらえる制度です。

登録すると商標権が発生し、独占的に商標を使用できるようになります。国連のような強い力を持たない企業にとっては強い味方といえます。先程の石鹸の例でいえば、もし商標登録されていれば後発の企業にロゴマークの使用をやめてもらうことができます。

しかしなにもしていない場合には、相手企業に使用をやめる義務はありません。それどころか相手企業にロゴマークを商標登録されてしまうと、先にロゴマークを使っていたとして使用できなくなります。商標権は、まったく同じデザインだけでなく類似のデザインの使用にも及ぶからです。

裁判で著作権を争うという方法もありますが、ロゴマークの場合には著作物性の観点から認められないケースも出てきます。

素敵な海のロゴマークには商標登録を忘れずに

多くの企業が海に関するロゴマークを使っているとはいえ、デザインは無限です。アイデア次第では消費者の印象に残るロゴマークを作ることができます。しかし、苦労して作ったロゴマークを他の企業に使われてしまう危険もあります。

その企業の評判が悪ければ、自社と混同されてイメージダウンになるかもしれません。ライバルが多い海のロゴマークだからこそ、商標登録は大切です。