最近、「ピクトグラム」という言葉をよく聞くようになりました。ピクトグラムとは、視覚記号のひとつで、絵文字、絵単語、図記号の総称と言われています。似たような言葉で「ロゴマーク」というものもあります。ロゴマークという語の方がなじみ深く、ピクトグラムという語の方が新しい印象を受けますが、その違いは何でしょうか。

案外わからない人が多いのではないかと思います。この記事では2つの言葉の違いについて説明します。

ネクタイをモチーフにしたロゴマークの使い方

ピクトグラムって何?

「ピクトグラム」とは、日本語に訳すと「絵文字」「絵単語」のことです。何かの情報を伝えたり、周囲の人に何か注意を喚起するために、それらをシンプルな図として表現したものです。一般的には、白地に青や、黄色地に黒など、明度差のある2色で描かれることが多いようです。

身近なところでは、「非常口」のマークや、「男性用トイレ」、「女性用トイレ」のマークなどがあります。ピクトグラムは、言葉が分からない方にもすぐに意味が伝えることができるという点で優れており、様々な年齢層、様々な国籍の方が訪れるような公共施設・商業施設などで、広く使われています。

ロゴマークって何?

「ロゴマーク」という言葉は、実は和製英語といわれています。「ロゴ」=「言葉」という語と、「マーク」=「印」という語を組み合わせた言葉で、その名の示す通り、図案化・装飾化された文字・文字列のことです。会社名や商号、商品名、ブランド名等を表していることが多く、商品そのものや広告・看板などに使われています。

朝起きて夜寝るまでに、ひとつもロゴマークを目にしないということは、案外難しいことなのかもしれません。というのは、工場などで生産された製品やテレビやネットの宣伝広告などには、必ずと言っていいほどその製品等のブランドや会社名が入っているからです。

現代では、そうしたものに触れずに生活することは難しく、私たちの生活はロゴマークに溢れていると言っても過言ではありません。

オリンピックで活躍した「ピクトグラム」

「ピクトグラム」という言葉を初めて聞いたのは、東京2020オリンピックという方も、少なくないのではないでしょうか。

東京2020オリンピックでは、全33競技50種類のスポーツピクトグラムが使用され、開会式では、パントマイムパフォーマーの方が、ピクトグラムをリズミカルに体で表現する様子が話題になりました。

開会式ではコミカルな印象を持った方も多いと思いますが、オリンピックにおけるピクトグラムには、重要な役割があります。世界中からたくさんのアスリートや関係者が集まるオリンピックにおいて、あらゆる人にその競技の名称を伝えるのは易しいことではありません。

様々な言語を使用する人々に、これから始まる競技や会場の場所を伝えるために、「一目でわかるシンプルな図案」が大きな役割を果たしているのです。オリンピックで初めて本格的にピクトグラムが使われたのは、1964年の東京オリンピックといわれています。

東京五輪でアートディレクターを務めた勝見勝さんという方が、まだ外国語を使用できる人が多くなかった日本で多くの外国の方々を受け入れるにあたって、考案したのが始まりということです。

生活に溶け込む「ロゴマーク」

企業やブランドのイメージを図案化した「ロゴマーク」。ロゴマークは、消費者がブランドを識別するための印の役割を果たしており、コマーシャルメッセージや広告、日ごろ利用している商品など、私たちの生活にあふれています。

現代において、ロゴマークはブランドイメージと密接に結びついており、ブランドの思いが込められた旗印とも言えます。このため、時にはなじみ深いロゴマークを捨てて、新しいロゴマークに刷新するということもあります。

そうしたロゴマークの変更の背景には、そのブランドや商品がこれからどのようになりたいか、消費者にどのようなサービスを提供したいかというメッセージが込められているのではないでしょうか。

何気なく目にしているロゴマークから感じられるイメージや、企業側が込めた思いについて、あらためて思いをはせてみるのも面白いかもしれません。

ピクトグラムとロゴマークの違いは?

どちらも私たちの生活になじみ深いピクトグラムとロゴマークですが、実際何が違うのでしょうか。まず、大きく違うのが、「ピクト」と「ロゴ」の違い、つまり「絵」か「字」かという違いです。ピクトグラムは、文字を使用しないで視覚的に意味を伝える「絵」ですが、ロゴマークは元々は「字」を図案化したもので、字自体を強調したり装飾したりして、企業や商品のイメージを人々に訴えるようなデザインにしたもので、そうした違いがあります。

しかし、ロゴマークの中にも、必ずしも文字を使用していないものもあります。車メーカーや洋服のブランドのロゴマークなどを思い浮かべたとき、その名称が文字としてが入っていないものもあるのではないでしょうか。あまりにも有名なブランドについては、文字として読むことができなくても、そのロゴマークを一見しただけでそのブランドが思い浮かぶほど浸透しており、ロゴマークの役割を十分果たせるものもあるのです。

ピクトグラムとロゴマークの使い分けは?

ピクトグラムとロゴマークのもっとも異なる点は、その「使い道」です。ピクトグラムは、多くの人に、言葉を使わず「目的地」や「警告」など重要なメッセージを伝える役割があります。対してロゴマークは、商品やブランドに結び付け、消費者に覚えてもらうことを目的としています。

目的が違うため、それぞれのデザイン性にも違いがあります。ピクトグラムは「わかりやすさ」に重点が置かれたデザイン、ロゴマークは、他と違う個性や人目を惹き、なおかつ消費者に好印象を抱かせるようなデザインを目指していると言えるでしょう。

これからビジネスを始めたいという方は、ブランディングの一環として、会社や商品のロゴマークを考える場面があるかもしれませんし、大きなイベントを開催したり、建物を建設する方は、利用者の方々の利便性を考えたピクトグラムを活用するということがあるかもしれません。

いずれの場合も、目的にあったデザインが求められると言えます。

身近な「ロゴマーク」と「ピクトグラム」の面白さ

普段、何の気なしに目にしているピクトグラムとロゴマーク。でも、「もし、ピクトグラムとロゴマークがこの世になかったら?」と考えると、少し不便で、そして味気ない生活になるのではないでしょうか。改めてピクトグラムとロゴマークの違いや、生活の中でどのように使われているかを考えてみると、普段自然と目にしているそれらの重要さや面白さに気づくことができるかもしれません。