ロゴマークのデザインをデザイナーに依頼したり、ロゴマークの開発を業者に委託したりすると費用が発生します。経理担当者としてはデザイン料や開発費、制作費などをどのように仕訳をして経費にしていくべきかが悩みになるでしょう。
無形固定資産として取り扱えば良いのではないかと思うかもしれませんが、本当に正しいのでしょうか。
ロゴマークの制作には費用がかかる
会社や学校、製品やサービスなどにはロゴマークを使うことで効果的なブランディングやマーケティングを実現できます。ロゴマークの活用は消費者に視覚的に訴えかけられるだけでなく、記憶に留めてもらいやすいことから有効性が高いことが知られています。
活用事例も増えてきているため、企業規模を問わずにロゴマークの制作をするようになりました。しかし、ロゴマークは社内の人材が全て制作してしまわない限りは制作費がかかります。経理担当者としてはデザイナーに支払うデザイン料、ロゴマークの開発会社に支払う開発費などをどのように経理処理すべきかが問題点です。
ロゴマークの制作費用は1万円程度から10万円程度が相場です。デザインの発案からスタートして、複数の候補の開発を依頼して、適宜改善を試みながら最終的に秀逸なデザインのロゴマークを制作するという長い道のりを経ると50万円近くなることもあります。
経費にするときには金額が大きくなるほど監査の対象になりやすいこともあって勘定科目の決め方に不安がが生じるでしょう。また、節税対策との兼ね合いで、可能であれば一括計上したい、数年間に分けて計上したいという場合もあります。
ロゴマークの制作にかかる費用はどのようにして取り扱うのが適切なのでしょうか。
無形固定資産と有形固定資産の違い
ロゴマークは無形固定資産として捉えて取り扱えば良いのではないかと考える人は多いでしょう。ソフトウェアなどのように形を持たない資産で、販売目的ではなく、取得価額が10万円以上なら無形固定資産です。無形固定資産と対比的に用いられている言葉として有形固定資産もありますが、有形固定資産の場合には形がある固定資産を指します。
土地や車、建物や設備などが代表例で、やはり固定資産の定義から10万円以上の取得価額というのが条件です。ロゴマークの場合には10万円に満たないこともあるので、固定資産にすらならない場合もあります。ただ、10万円以上の費用がかかったからといってロゴマークは全て無形固定資産になるわけではありません。
販売する目的で取得しているわけではないのになぜなのでしょうか。ロゴマークは自社で使用する目的もありますが、販売促進のための用いられることもよくあります。広告やパッケージに印刷したり、イベントでポスターに大きくプリントしたり、ノベルティやパンフレットに入れたりするケースは多いでしょう。
このような観点ではロゴマークの制作は宣伝広告費の一部として考えられます。そのため、経理上の取り扱いは意外に複雑で、誤っているケースも実は少なくありません。
ロゴマークにかかった費用は商標登録の有無で経費処理が違う
ロゴマークの制作費については商標登録の有無で取り扱いが違うと考えるのが適切です。ロゴマークを制作して商標登録をした場合には商標権を取得することになります。商標権があると無形固定資産として認められるので、ロゴマークの開発費やデザイン料は無形固定資産としての経理処理をするのが原則です。
しかし、商標登録をしていない場合には宣伝広告費として考えるのが基本です。無形固定資産として取り扱ってしまうと勘定科目の誤りになるので注意しましょう。
商標登録をした場合には無形固定資産
ロゴマークの商標登録をした場合には商標権に基づいて無形固定資産として経理処理を進めます。
商標権なので耐用年数は10年となり、残存価額は0円として定額法による減価償却をするのが正しい経費の計上方法です。なお、デザイン料などの制作費は全て無形固定資産の商標権の取得のために必要になった費用としてまとめて経費にします。
しかし、商標登録のための諸費用は任意で償却が可能なので、一括して経費に計上しても、希望する方法で償却をしても構いません。税金対策やキャッシュフローを考えて適切な減価償却の仕方を選ぶと良いでしょう。
商標登録していない場合には繰延資産
商標登録をしないロゴマークの場合にはデザイン料や開発費などは繰延資産に該当します。繰延資産とは通常、取得してから1年以上にわたって使用できる資産です。すぐに消耗品としてなくなってしまう場合には繰延資産ではありません。
ロゴマークは一度デザインを決めてしまえば、何年間でも使用できることから、繰延資産として考えるのが適切と考えられています。繰延資産の中にも項目があるので、何に該当するかによって勘定科目は厳密には違いがあります。
項目上はロゴマークの制作費は宣伝広告費または開発費です。単純には金額で判断することが可能で、20万円未満なら宣伝広告費、20万円以上なら繰延資産のうちの開発費として取り扱います。広告宣伝費の場合には一括計上をすることになりますが、開発費になった場合には任意償却です。
一括計上することも任意の形で減価償却をすることも可能です。
ロゴマークを商標登録して無形固定資産にするメリットとデメリット
ロゴマークを商標登録して無形固定資産にすると、経理処理をする上ではどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
商標登録するとロゴマークの制作費としていくらかかったかによらず、10年間の均等償却ができるのが特徴です。一括償却をすると節税対策にならないような収支状況になっている場合には税金を減らせます。
しかし、経費が余っている状況では税法上は黒字が大きくなるため、今年度の税額も増えるので注意が必要です。また、商標登録をすること自体で費用が発生するのもデメリットになります。商標登録をすることで他社にまねをされることがなくなるメリットはありますが、経理上で考えると収支全体を考慮してどちらが良いかを判断しなければなりません。
ロゴマークは商標登録をすると無形固定資産になる
ロゴマークは無形固定資産と思われがちですが、広告やノベルティなどに使われることを考えると宣伝広告のツールと捉えることができます。
商標登録をしていない場合には繰延資産となり、ロゴマークの制作費は20万円未満では宣伝広告費になるのです。商標登録をすると無形固定資産になるため、減価償却の際には均等償却をする必要があります。